レッツ ブリリアント 2001/09 第3号

発行者
精神障碍者社会復帰施設
特定非営利活動法人(NPO法人)ブリリアント 施設長 内田 秀司

住所 〒 441-8145 豊橋市駒形町字坂口56番地
TEL 0532-46-0033
FAX 0532-46-0163

URL http://brilliant-gh.sakura.ne.jp/

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平成13年9月1日発行

最近のわたし

清水 伸太郎 豊橋精神障碍者地域家族会くすのき会 元会長

 今年の夏は、異常とも言える酷暑で、私も大変苦しんでおります。さて、私は、最近図書館に通っています。図書館では、新しい友人やまた時を越えた友人とも出会います。私は、ある保健婦さんと15年間のお付き合いが有りますが、図書館で出会ったその人は、とても品が良く昔も今も変わらず和やかに接してくれるので、その事をとても嬉しく思っています。またこの間はグループホームブリリアントに行き、運営責任者のご夫婦さんとお話をし、最近の状況などを伺いました。グループホームなどで共同生活をする人達は、心と心が繋がっていなければ幸せにはなれないというを、改めて理解しました。

 話は変わりますが過日、現在生きていれば、50歳になっている筈のやまびこ会の会長もしていた通称 “文ちゃん” の夢を見ました。( “文ちゃん” は、20歳くらいから下半身マヒで、私はその方の元気な姿を見る度にどれだけ励まされたか分かりません。) その朝私は、今の障碍の苦しみがあの時の “文ちゃん” にもあったのだと気付き、涙がとめどもなく溢れ、泣けて泣けて仕方ありませんでした。どのくらい時間経ったか分からないくらいでした。“文ちゃん” の人生最後のプレゼントは、豊橋駅が改築される時に、構内に身障者用エレベーターの設置を提案実現したことでした。

 私は、その後半身不随になり、3年半になります。やはり苦しいです。そして、親しい人にはよく愚痴をこぼします。しかし一方では、夢を熱く語る事も有ります。

 人間には、そして人生には、常に表裏が有ります。私は、障碍者になった事でこの事を強く感じる様になりました。しかし人間は、絶対に前を見て、綺麗な心で生きていったほうが、良いと思います。

 私も、一生懸命に生きて行きます。皆様もこれから先必ずしも平坦な人生とは限らないかもしれません。そんな時、“文ちゃん” や私の人生を参考され、さらに健やかに生きて行かれればと願っている今日この頃であります。

Mr.サマータイム

森下 昌洪 岩倉市50代

 今、私は “サマーライブ” に出演する為に、サーカスの「Mr.サマータイム」を特訓している。この歌は、22年ほど前の曲で、カネボウのコマーシャルソングとして、サーカスが歌って大ヒットした。フランス人のミッシェル:フュガンの作曲だ。女の人の浮気心をみごとに表現している。ジャズ風のテンポで、この独特のリズムは非常に乗りにくい。

 ジャズピアニストによれば “シェーク”(揺さぶると言う意味)とか言うリズムだそうだ。今までにこんなに、てこずった曲は、初めてだ。ひょっとしたら日本人向きでないかもしれない。この夏用に選曲した。すでにプログラムは出来あがっているから止めるわけにはいかない。当日は、私の友人をたくさん誘っているのでぶざまなまねは出来ない。

 あと残り10日間で何とか完成させたい。ピアニストに自分用のキーでカラオケテープを作ってもらった。楽譜も書きなおして、もうどこへ出ても完壁に歌えるように、毎日練習している。コンサート当日はピアノの他にドラムとベースが入る。今年の夏の記念に“Mrサマータイム”を自分の持ち歌にするつもりだ。

人生について

K・U

 人はなぜ生まれ、生き続けなければならないのか?僕なりの考えを書きたいと思います。僕はまず、第一に、この世とあの世の存在を信じています。つまり、魂は永遠に不滅だと思っています。そして、多分、人の魂は必ず持って生まれたこの世での修行のための “事件”、“不幸” を経験し、これを何度も乗り越えて初めて、心ではなく魂そのものが浄化され、レベルが向上するのだと思います。この事は何も、非日常の中でしか語れないようなものではなく、正に日常の、この現実の世の中の出来事の、深い所でこそ行われなければ成らないものであると考えています。

 だからこそたとえ僕の様に「精神分裂症」と言われても、そして又友人達と差がついても、今の毎日毎日を誠実に真剣に生き続けて行き、感謝の心を忘れなければ、必ず神様が、僕にまた新しい宿題を与えてくれ、新しい展開が出来てくるのではないか。そんなふうに思います。

 僕の場合、まだまだですが、一応まともな会話が交わせるようになった分岐点は、つまり事件は高校卒業をした、春の3月中に68000円の手切れ金を親から貰って家を追い出された…事そして新聞配達と集金の仕事をしながら完全に自立し、独学を進め3浪の形で(1年半東京都立の理科系短大に籍を置いて、人生への失望から自殺未遂までやりましたが。)名古屋工業大学を卒業という壁を乗り超える中での沢山の失敗と本当に沢山の人々との会話があった事です。さらに精神病院に7,8年居た不幸も、閉じ込められた環境の中でも自分自身で面白い事を見つけ出すことが出来るようになったことで、僕なりの速さで魂の修行が出来たのだ、と思えます。今では毎日作業所に通っていますがここでも、僕はまじめに頑張ることで大きなものを手にいれました。それは人間愛の原点に帰った本当の人間力学の理解です。結局人間は人の愛がないと生きていけないものだ。という事も最近になってようやく本当の意味が分かりました。

 さて僕の今住んでいる所 “グループホーム ブリリアント” での現状生活を考えると、まだここで見つかるかもしれない “不幸な事件” は見つかりません。でも敢えて見つけようとしなくても或る日突然にそれは来るものだから、今はもう少し、不完全燃焼ながらも頑張っていこうと思います。

マリンボーイ

H・T

 僕は、父の勧めもあり、幼い頃からヨットの世界に馴染んで来ました。現在は、1級小型船舶とレーダーの資格を持っています。ここで、1つ考えてみて下さい。ヨットは風に吹かれて動くのでしょうか? ヨットの走る、帆走の原理の例えに、面白い事柄が有ります。

 カモメやアホウドリが、海上をあまり翼を上下に動かさず滑空出来るのは、羽根の形に秘密が有ります。独特の流線形の断面が空気力学的に体を上に持ち上げ、しかも前に進む力をも生じるのです。ヨットの帆は、単なる布切れではなく、上記の鳥の翼と同じ原理の軽量立体構造物で有る事であり、それゆえヨットは風に逆らって進むのです。

 次に、基本的に方向のコントロールについてですが、ヨットの船底には舵という水切板があります。これによってまるで、所謂船外機がハンドルを切るように船体を動かして行きます。

 ところで、僕の持っている免状では、総トン数20トン、つまり船体質量と搭乗人員の重さの合計が20トン未満の小型船舶の運転が一人で出来、大体20人位の搭乗が可能です。また、航海距離は連続100海里(およそ180キロメートル)までです。

 さてヨット航海の最大の魅力と言えば、おそらく、僕もそう思いますが、海上の風と波の状態を的確に把握し、それだけで船の水平バランスをとり、しかも、いかに速く前進できるかという、この一点に集約出来るのではないかと思います。

 このヨットの楽しさに取付かれ僕は静岡大学時代もヨット部に所属し、3年の秋には東海地区大会でチーム優勝を果たしました。今後もこの様なレースの機会に恵まれれば積極的に参加して、ヨットの醍醐味を楽しんでいきたいと思っています。

ブリリアント専属のピアニスト

内田里枝

 ブリリアントファミリーが夕食を食べ終わった頃「こんばんは。」という声。振り向くと真っ赤な顔をモジモジさせ、ニコッと笑ったY君が立っていた。

「あーらこんばんは、お久しぶり。又飲んできたの?。夕ご飯食べる?。」「は、はい。」彼は遠慮がちにイソイソと夕食を食べ始めた。Y君はお酒が大好き。会社の帰りにいつも居酒屋で飲んできては、酔い醒ましにブリリアントに寄る。

 夕食がすむといつものように「ピアノ弾いていいですか?。」 「いいよ。」と言うと、彼の18番を弾き始めた。ショパンの “幻想即興曲”。ところが酔ってない時はすばらしい演奏なのに旋律がえらく乱れている。気分よく弾いているのはわかるが、指がついていかないらしい。羽目をはずした “幻想即興曲” だがとても気持ちよさそう。それから何曲か弾いて酔いが醒めた頃、Y君は「帰ります。」と言って帰っていった。

 彼は4年くらい前、ブリリアントにショートステイしたことがあった。何かチョッと人生にいきづまったかに見えた時、1週間寮生と共に過ごした。私が台所で夕食の支度をしていると、隣の部屋からピアノの音がポロポロと聞こえてきた。「ステキな曲ね、何ていう曲?。」と聞くと「ショパンのノクターンです。」と彼。

 楽譜もなくただ楽しそうに弾いている。私はこの上なく幸せな気持ちだった。夕食の準備をしながら生のピアノが聴けるなんて!!。

 Y君は1週間ブリリアントで生活したのち、何か思う事があったのか生き生きと仕事に打ち込めるようになった。

 それからY君とは親戚づきあいのようになり、ブリリアントに寄ってはピアノを弾いてくれている。彼は30曲くらいの曲が頭にインプットしてあって、楽譜がなくてもなんでも弾いてしまう。これは、すごい才能だ。私の1番好きな曲はベートーベンの “月光”。 目を閉じてジッと聴いていると、とても癒される。彼のピアノはそれはそれは優しいのだ。

 以前私の誕生日にY君のピアノコンサートをしてもらったこともある。誕生ケーキとコーヒーとで聴く彼の演奏はすばらしいものだった。

 今、寮生はY君が来てくれると、彼のピアノに合わせて歌を歌います。この間は「カーペンターズ」の何曲かをセッションしました。とても楽しい展開になってきました。Y君のピアノ演奏を楽しみたい方、ぜひブリリアントまでお越しください。お待ちしています。

編集後記

 ブリリアントで飼っている猫のシロは、あんまり糞のくせが、悪く、ついに寮生A・Uの個室から1階の特製オリに強制隔離となりましたが、初めこそ落ち着かなかった“シロ”も2週間ほどでとてもおりこうさんに変身し、今では全員で溺愛しています。もう“シロ”のいない状況は考えられず、病弱ですが、長生きして欲しいと皆で願っています。また、例の水田の赤米は現在70cmくらいになり、まあ、順調に成長しています。ところでブリリアントで、新しい企画として「意見討論会」を(木)に始めました。これは、はまゆう断酒会に通う寮長さんの提案で、寮生各自が人生で注意している事などを本音で語りあうものです。すでに5回位行っており、寮生がみな建設的、積極的な時間の過ごし方をするように成って来ています。

K・U

 4コマ漫画に、初挑戦しました。寮の皆さんの案をもとに作りました。如何でしたか。ブリリアント祭のイラストも描きました。11月11日には、是非お越し下さい。ところで先日、絵画のコンクールに応募しました。それはブリリアトのフラメンコ教室の先生をモデルにしたもので、自分では納得出来たものでしたが、残念ながら落選の通知が、来てしまいました。しかし、これからも機会があれば挑戦して行きたいと思います。

イラスト担当 H・T
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